石岡瑛子展から学ぶデザインの本質:デザイナーが今知るべきこと

石岡瑛子展の入口に掲示されたIデザインのポスター
石岡瑛子展入口のポスター
デザイナーになるには

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こんにちは、デザイナーのナカジです。
先日、兵庫県立美術館で開催中の石岡瑛子展に行ってきました。

広告業界に携わる者として、この展示は見逃せないものでした。
今回は、その体験を通じて感じたことや学びを共有したいと思います。

石岡瑛子展とは?

石岡瑛子さんは、世界的に活躍したデザイナーであり、その作品は広告、舞台、美術など多岐にわたります。

彼女の作品とその背後にある思考を深く知ることができるこの展示は、デザインに携わる人にとって貴重な機会です。

会場全体を包む「赤」の世界

展示会場は全体的にで構成されており、作品にも赤が多用されています。

これは石岡さんがデザインのキーカラーに赤を多く使用していたためです。

そしてこの赤に関しても言及されていました。

「私はデザインのキーカラーにRED(赤)を使うことが多い。そのくせ自分の実生活の空間に、赤はどこにもない。地味な色に囲まれていれば心理的に落ち着く人間なのに、表現者となると別問題になる。」

この言葉から彼女が創作活動において普段の自分とは異なる一面を持っていることがうかがえます。

なぜ彼女がデザインのキーカラーに赤を多用しながら、実生活では赤を避けているのか、その理由を考えてみましょう。

  1. 内なる情熱と日常の調和:
    • 赤は情熱やエネルギーの象徴です。石岡さんは作品を通じて強いメッセージや感情を表現するために赤を選んでいる可能性があります。
    • 一方、日常生活では心の安定や落ち着きを求め、地味な色に囲まれることでバランスを保っているのかもしれません。
  2. 創作時の自己解放:
    • 表現者としての自分は、普段抑えている感情やアイデアを解放する場です。
    • そのため、創作活動中は別人格として大胆な表現や挑戦的なデザインに取り組むことができます。
  3. 観客へのインパクト:
    • 赤は視覚的に強いインパクトを与える色であり、観る者の注意を引きつける効果があります。
    • 石岡さんは作品を通じて強烈なメッセージを伝えたいという意図から、赤を多用しているのではないでしょうか。
  4. 自己と作品の分離:
    • アーティストとしての自己プライベートな自己を明確に区別している可能性があります。
    • 作品は社会や他者に向けた表現であり、その中で自分の内面や理想を具現化しているのかもしれません。
  5. 創造性の追求:
    • 別人格になることで新たな視点やアイデアが生まれ、創造性を高める効果があります。
    • 日常から離れた状態で創作に没頭することで、より独創的な作品を生み出すことができるのでしょう。

総じて、石岡瑛子さんが表現者として別人格になるのは、自身の内なる情熱やメッセージを最大限に表現するためではないかと思います。

これは多くのクリエイターやアーティストにも共通する現象であり、創作活動を通じて自分自身の新たな一面を発見・表現しているのだと考えられます。

印象に残った作品:HIROSHIMA APPEALS

展示会で最も心に残ったのは、HIROSHIMA APPEALSというポスターです。

石岡瑛子による1990年のHIROSHIMA APPEALSポスター『X像の沈黙』
出典: JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)1990年HIROSHIMA APPEALS『X像の沈黙』石岡瑛子デザイン

これは1983年から続くキャンペーンで、広島の平和への取り組みを表現したものです。石岡さんが担当した1990年のポスターは、強烈なメッセージ性を持っています。

このポスターには、両手で目を覆い、口を固く結んだキャラクターが描かれています。これは「広島の悲劇を二度と見たくない」という願いと、「悲劇に目をつむるのは罪である」という警告の二つの意味を持っています。

スケッチも展示されており、デザイナーがどのように考え、作品を作り上げていったのかが垣間見えます。これはデザイナーとして非常に興味深いポイントでした。

ただこちらの作品やスケッチは撮影不可でした。
実際に見たい方は石岡瑛子のIデザイン展に行ってご覧になってみてください。

石岡瑛子の言葉に学ぶ

展示では、石岡さんの数々の言葉が紹介されていました。その中でも特に心に響いたのがこちらです。

「デザイナーもアスリートと同じで、徹底的に自分を鍛えないと、そうしてオリジナルな何かを生み出せないと、サバイブなんてできないですよ。」

という言葉は、デザイナーという職業の厳しさと、創造性を維持するための不断の努力の必要性を強く訴えています。

この言葉の真意を深掘りすると、以下のポイントが浮かび上がります。

1. 自己鍛錬の重要性

  • アスリートとの共通点:
    • アスリートは日々のトレーニングや自己管理を徹底し、限界を超える努力を続けています。同様に、デザイナーも技術や感性を磨くための絶え間ない鍛錬が求められます。
    • これは単にスキルの習得だけでなく、精神的な強さ忍耐力も含まれます。

2. オリジナリティの追求

  • 独自性が生存の鍵:
    • デザイン業界は競争が激しく、情報も溢れています。その中で生き残るためには、他にはないオリジナルな何かを生み出す必要があります。
    • オリジナリティは、深い洞察豊富な経験、そして絶え間ない挑戦から生まれます。

3. 厳しい競争環境

  • **「サバイブなんてできない」**という言葉の重み:
    • デザイナーは常に新しいものを求められ、過去の実績に安住することは許されません
    • 市場やトレンドの変化に対応し、常に進化し続ける姿勢がなければ、生き残ることは難しいでしょう。

4. 継続的な自己成長

  • 自己満足で終わらない:
    • 一度の成功に満足せず、次の目標に向かって努力し続けることが重要です。
    • デザイナーとしての成長は、終わりのないプロセスであり、それを受け入れる覚悟が必要です。

5. プロフェッショナリズムの徹底

  • 高い倫理観と責任感:
    • クライアントや社会に対して、誠実であること、そして期待を超える成果を提供することがプロのデザイナーとしての務めです。
    • そのためには、自分自身を厳しく律することが求められます。

6. 精神的・身体的な強さ

  • バランスの取れた生活:
    • アスリートが身体のケアを重要視するように、デザイナーも精神的・身体的な健康を維持することが、創造的な活動を続ける上で不可欠です。
    • ストレス管理やリフレッシュも、自己鍛錬の一部と言えるでしょう。

総括すると、この言葉は「デザイナーとして成功し続けるためには、常に自分を鍛え、進化させ、オリジナルな価値を提供し続けなければならない」という強いメッセージを含んでいます。

石岡瑛子さん自身が、その言葉通りに徹底的な努力と探求を続け、世界的な評価を得たデザイナーであることから、この言葉の重みと真実味が伝わってきます。

デザイン業界の厳しさを語るだけでなく、自身を高め続けることの重要性を教えてくれるこの言葉は、デザイナーを目指す人や、現在活躍しているデザイナーにとって大きな指針となるでしょう。

時代を超えるデザインとは

EXPO'70日本万国博覧会のポスター、石岡瑛子によるデザイン
出典: 石岡瑛子展、撮影許可を得て撮影 XPO’70日本万国博覧会のポスター

このポスターは、シンプルさの中に強いメッセージ性が込められており、無駄のないデザインが時代を超えて新鮮に感じられます。特に、中央に配置されたシンボリックなロゴマークは、人々の目を引きつけ、**万博のテーマである「人類の進歩と調和」**を見事に表現しています。

また、色使いも非常に計算されており、限られた色彩で強いインパクトを与えています。このようなデザインは、現代においても通用するどころか、ミニマリズムやシンプル志向が再評価されている今だからこそ、より一層その価値が際立つのではないでしょうか。

一方で、当時の他のポスターや広告と比較すると、このポスターがいかに先進的であったかがわかります。デザインのトレンドや技術が変化しても、本質的な美しさやメッセージ性を持つ作品は色褪せないということを実感しました。

デザインとは何か、良いデザインとは何かを改めて考えさせられる機会となりました。時代を超えて人々の心に響くデザインを生み出すことの難しさと、その素晴らしさを感じるとともに、自分自身もそのような作品を作り出せるデザイナーになりたいと強く思いました。

最後に

石岡瑛子展は、デザイナーだけでなく、これからデザインを学びたい人やデザインが好きな人にとって、多くの学びと刺激を与えてくれる展示です。

足を運べない方は展示会の図録もおすすめです。
彼女の作品と熱量のある言葉が詰まっており、読むだけでインスピレーションが湧いてきます。
興味のある方はぜひ手に取ってみてください。